読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

下町の車両基地

顔が地下鉄っぽくて、漫画とか歯とか声優とかが好きらしいです。

我が町

 お久しぶりです。3月になりました。大学の卒業制作も無事終わり、校舎の大掃除や打ち上げ、引き継ぎ用の資料作成、今年で勇退なさる先生の最終講義のアシスタントなどを終えてやっと肩の荷が下りたと思いきや、約2年お世話になった下宿から実家へと撤退するための引越し作業を先日終わらせて、やっとのことで落ち着いてきました。

 こう落ち着いてくると、年のせいか今までにあったことを俯瞰して眺めるクセがついてしまったようです。多分、一人暮らしで身についた悪いクセなのかもしれません。

 

 突然ですが、皆さんはソーントン・ワイルダーの「我が町」という作品をご存知ですか?

 どのような作品かと言うと、登場人物が日常を日常のままに過ごし、一生を終えていく作品です。

 戯曲中にあるグローバーズ・コーナーズ*1では何も特別なことは起こりません」という台詞通り、登場人物の死や結婚以外劇的なことは起こりません。観客はその「日常」の貴重さを知るという内容です。「人生ってひどいものね。そのくせ素晴らしかったわ」と台詞があるのですが、それが結構心にくるもんがあり、劇中に登場する市民の誰もがそれぞれに自分の生活をそのままに生きている、そのなかでのちょっとしたかかわりがこの劇の物語の流れであるということが一言で伝わってくる感じが取れるのです。その中のちょっとした出来事が話を変えてしまいます。だから台詞は背景が細部まで読み取れるように演じなければならない、と、とにかく「観客が舞台上に言葉だけで細かく再現されたグローバーズ・コーナーズでの生活を眺めている」こんなイメージです*2

 

 約2年お世話になった下宿先、丘陵の谷間に鉄道が走り、その周辺には数個の飲食店とスーパー、寂れかけた商店街があり、丘を登った先の住宅街には家族連れや高齢者が立派な一軒家を構えて、狭い通りに外車が時々通ったりする変な町で一人暮らしをしていました。

 そんな丘の上のアパートにいたわけで、部屋自体は気に入ってました。6畳の白を基調とした部屋を好きなように散らかしてました。ただ下宿で思い思い休んだ記憶はあまりないです。朝は8時から大学に行かなけれなばならないからと5時30分に起きて支度して、朝ごはんは大学で食べようと慌ただしく家を出ます。丘の上なので結構寒いです。冬場は着込んで家を出ました。近所に住んでる人よりちょっと早めに家を出るようなのであんまり人には会いません。ただ駅前に出ると黒い人たち*3がたくさん現れては都心方面の電車に吸い込まれていました。僕は下り方面の電車を利用して向かうのですが、下りも結構混むのです。時たま座れたり座れなかったり、上る方よりはマシです。

 大学を出るのが大体22時~23時で、お酒の匂いおする電車に少しだけ揺られて帰るのですが、商店街はがらんとしまっており、駅前のスーパーで半額まで値下がりしたお惣菜を買って、ご褒美とコーヒーとかシュークリームなんかを買って帰っていました。やっぱり深夜近くなるとどこの家も明かりがついたり消えたりしていて、時々もくもくとお風呂の香りのする湯気が流れたりするんです。それを追って空を見上げると、星が散りばめられていて、丸いお月様が顔を覗かせているのです。それが僕には少し滑稽に見えて、「お疲れ様」なんて声をかけてくれてるのかななんて。おかしいですよね。私のお気に入りの風景だったりします。小高い丘に家があったものですから向こうに広がる空なんかをよく見ては心を休ませていました。家でやることは課題と寝る事ぐらいです。寝に帰るような感じです。

 

 ただ、とにかく丘の上にあるものですから坂がきつかった。振り返ってもあの坂はこの先登ることはないんじゃないかなって思います。靴は2年で3足履きつぶれ、足の筋肉は一回りは大きくなった気がします。雪が降った日にはダンボールで滑るぐらいには急な坂なんです。とにかくきつかったです。

 近所の人は結構苦労してる感じでした。下宿の横に高齢のおばあさんが住んでいるのですが、その方の買い物やゴミ出しなんかの力仕事なんかを手伝ったりすることは時たま程度にやりました。雪の日には雪かきもやったかな、懐かしいです。

  作品公開で大学に一般の方を呼べる機会があって、そのおばあさんをお呼びしました。そうしたら近所の人を5名ほど連れてくださって、「この環境で学べるのが羨ましい」と。大学のことは要所要所で変なところがあるけど結構気に入っていたので素直にうれしかったです。それよりも、「来てくれた嬉しさ」と「すっごい元気だな」という感情が強かったです。

 やっぱり、あの「坂」が秘訣なんでしょう。困難することがあっても住民の協力で何とかなる。幸いにも住んでた地域には自治会が存在して元々の団結力が強かった。ゴミ出しなどでもよくご近所で会話してるのも見かけました。僕が住むずっと昔からお互いに協力しあっていたんでしょう。それがあの街の日常なんですね。とにかく優しい人が多かった。心なしか駅前のお店のも、個人店でもチェーン店でも心なしか接客がすごいよくって、不思議ですね。

 

 それぞれの町には、それぞれの生活があるのかもしれません。私は「我が街」を1度観て、日々の生活を構成している周りの人たちをもっと大切にしようって思いました。そうしたらたくさんの人に助けられているんだなって実感して、どうしようもなくなりました。そんな2年近くしか住まなかった街ですが、長いようで短い、言ってしまえば「ちょうど良い」時間だったのかもしれません。

どんな出来事があっても、時が流れるにつれ「よかったのかもしれない」と思えるような、人間結構ちょろい生き物なのかもしれません。

 

 

実家に戻り、この文章はリビングで書いております。さっきまでせっせと家事に励んでいた母は隣にあるソファで母はうたた寝をしています。そろそろ皆、寝る時間ですね。

灯りがついてるのは二つ、三つ。星が空に、十字に輝きながら眠っています。

学者の説はまだ決まっていませんが、あそこには生物がいないということは、大体考えているようです。

星は、ただのチョークか、火なんですね。只、この地球だけが何かになろうとして四六時中、あくせくとしているわけです。

その動きがあまりにも激しいので、16時間毎に、人は床に入って休息を取らなくてはならないのです。

そろそろ0時になります。これ以上文が長引くと、寝る時間が少なくなります、ですから、この辺で。

*1:舞台となる架空の町

*2:芝居の大半はそんな気はしますが…

*3:スーツ